メタゲノミクス
最近になり、微生物群が持つ複雑性、そしてそれが人々、土壌、海洋の健全性や環境にもたらす影響についてようやく理解され始めています。マイクロバイオームの機能不全は、ヒト疾患、作物の不作、気候変動、環境災害といった複雑な問題に関連していると考えられています。マイクロバイオームの構成と分布を解析すれば、これらの根本的な原因についての理解を深め、解決に向けた方向性を示せる可能性があります。
マイクロバイオームの研究
メタゲノミクスの解析においては、研究所での培養が可能な細菌・古細菌に対しては従来の16Sサンガーシーケンシングアプローチを、環境サンプルから直接解析を行う場合は次世代シーケンシング / 大規模並列アプローチ(高度な16S微生物群解析)をご利用になれます。微生物群に存在するすべての遺伝子を解析する場合には、次世代シーケンシングを介したショットガン法(マイクロバイオームの全ゲノムシーケンシング)も頻繁に用いられます。これにより、系統発生解析のみならず、微生物群内のそれぞれの種が持つ機能的能力についても手がかりを得ることができます。
メタゲノミクスにおける研究
メタゲノミクスおよびマイクロバイオーム研究の用途として以下が挙げられます。
農業分野の研究者は、健全 / 不健全な作物の土壌サンプルから集めた微生物のシーケンシングを行い、作物の健全性向上につながる土壌処理の開発に応用できるような細菌または古細菌が存在しないか調べています。
環境科学者は、マイクロバイオームの個体数と構成が環境の全体的な健全性と機能にどのような影響をもたらすかについての理解を深めるため、健全 / 不健全な生態系に存在する微生物群がもたらす複雑な相互作用について研究しています。
現在医師たちは、糖尿病、アルツハイマー病、細菌感染症といった病態に関連のある、腸内フローラなどのマイクロバイオームの研究を進めています。特定の薬剤 / 療法がこれらの微生物群の構成にもたらす影響を観察し(投与前 / 投与後)、そのオンターゲットまたはオフターゲット効果を調べることで、治療の実行可能性と患者の転帰についての手がかりを得ることができます。